今年『グランドフィナーレ』で芥川賞をとった人・阿部 和重。
石原都知事に安っぽいと揶揄されていた。その論評は頷けなくもない。
スパイ塾に銃器類・プルトニウム、ヤクザとの抗争等、
サブカルの影響をモロに吸い込んだ情景が濃いからだ。
はじめ読み始めたときは、
サブカル小説であるならば、押井守の『アヴァロン』のほうが、
描写力と背景の緻密さで数段上だなと思った。
高をくくって、ナナメ読みしていたら物語のラスト周辺で
いきなり主人公の人格に亀裂が生じて、今までのことが
長い長い伏線でしかなかったのか、とびっくるする。
ラストも有耶無耶で終わってしまうので、
物語の秘密も、主人公が多重人格であったのか、それとも
すべての人物が存在していたのか、全く分からないまま。
壮大な「?」を抱えたまま、気持ち悪い終わり方だが、
ハリウッドの安易なハッピーエンドを毛嫌いしている人にとっては
面白い小説になるとおもう。

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価格も手頃だし、ページも少ない、一人称の日記形式で読みやすい。