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読書ノート

田辺 保『パスカル伝』感想。多彩すぎる夭折の人

投稿日:2006-02-27 更新日:

パスカル伝

パスカル伝

田辺 保

パスカル、気圧の単位・ヘクトパスカルであまりに有名な人物。

しかし、その39歳という短い人生はあまりにも多彩で

とらえどころがない。人によっては、大数学者と見る人もいるし、

真空実験を行った物理学者、『パンセ』を書いた哲学者、

『プロヴァンシバル論争』を戦った熱き信仰の人、

機械式計算機を発明した人、という人など、本当に様々なのである。

この伝記は、一番有名な『パンセ』の著者という側面をあえて外し、

パスカルの短すぎる人生を描いている特異なものである。

常に病に苦しんだパスカルを執拗に描き、厳しい病の中で尚、高潔な

理性を失わない偉大な精神の持ち主。

キリスト者はこの世の生活をいわば犠牲とみなすべきである」

「病はキリスト者の本来の状態」

病に苦しむこと、この世の幸福をすべて奪い去られ、

不断に死の危機を心がけること。

それこそが大いなる幸いであるという認識の転換。

「どんな出来事もすべて、神のなかにおいて、

 初めから予知され、予定されていたのだと考えねばなりません」

という、悲壮かつすべてを肯定する意思の力。

「真理が支配しているときに平和をみだすのが罪であると同様に

 真理が破壊されている時に、平和の中に安らっているのもまた、

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 罪である」

人間の歴史で、真理が破壊されていない時代があっただろうか?

だからパスカルの人生は戦いの人生だった。

癌に侵され、脳に血がたまり、脳細胞が壊死をおこしても

最後まで戦っていた。静謐な精神を失わなかった。

「人間は一本の葦にすぎない

 自然の中でもいちばん弱いものだ

 だがそれは考える葦である

 これを押しつぶすには 全宇宙はなにも武装する必要はない

 ひと吹きの蒸気、一滴の水でも

 これを殺すに十分である

 

 しかし、宇宙が人間を押しつぶしても

 人間はなお 殺すものより尊いであろう

 人間は自分が死ぬこと

 宇宙が自分よりもまさっていることを知っているからである

 宇宙はそんなことはなにもしらない

 だから、わたしたちの尊厳のすべては考えることのうちにある

 まさにここから 私たちは立ち上がらなければならない

 私たちはそれを満たすことができないのだから

 だから、正しく考えるように努めようではないか

 いかに生きるかの根底はここにある。」 パンセ L200

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