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カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』感想。So it goes. そういうものだ

投稿日:2006-11-23 更新日:

スローターハウス5

スローターハウス5

カート・ヴォネガット・ジュニア, 伊藤 典夫

カート・ヴォネガット・ジュニア, 伊藤 典夫

ヴォネガットの小説を読むのは2作目。

一作目は爆笑問題の太田光が自らの事務所を立ち上げるときに

あまりにも好き故に名前をそこからとった『タイタンの妖女』

『タイタンの妖女』でも物語の要としてでてくる、トラルファマドール星人が

引き続き登場するにとどまらず、懐かしい名前が登場する。

テーマやアイロニーに満ちた文体は『タイタンの妖女』と同じだが

ヴォネガッドが第二次世界大戦中に実際に体験したドイツ軍による捕縛と

捕虜生活中に体験したドレスデン爆撃が描かれていて

テーマが生々しく迫ってくる。

(小説としては『タイタンの妖女』の方が面白かった)

そのテーマというのは、あるいは禅に通じるものがあるかもしれない、

主人公のピルグリムがトラルファマドールから教わった観法、

それは『タイタンの妖女』でラムファードが時空歪曲率漏斗に

突入して得たものと同じだった。

「あらゆる瞬間は、過去、現在、未来を問わず、

 常に存在してきたのだし、常に存在しつづけるのである。

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 あらゆる瞬間が不滅であり、彼らはそのひとつひとつを

 興味のおもむくままにとりだし、眺めることができるのである。

 一瞬一瞬は数珠のように画一的に繋がったもので、いったん

 過ぎ去った瞬間は二度と戻ってこないという、われわれ地球人の

 現実認識は錯覚に過ぎない」

上記のテーマはピルグリムが意に沿わぬタイムリープを永遠に

繰り返しながら何度も語られる。昔読んだ道元の『正法眼蔵』の

有時、永遠の今が思い起こされた。

先ごろ、ノーベル物理学賞をインフレーション宇宙論の学者が

受賞したが、インフレーション宇宙論の提唱者のホーキングは

「実時間と呼ばれているものは、我々が考えている宇宙像を

 記述する便宜上、考案された観念に過ぎないかもしれない」

いわゆる「時間の矢」は地球人の思考上の特性・限界にすぎない

という可能性は充分にありうる。しかし、自分の未来まで

ぜんぶ見渡せたら、どうなのだろうか。So it goes.そういうものだ、

と達観できるものだろうか。時間の座標軸をどのようにも行きつ

戻りつできたとしても。

そういう疑問に取り付かれたら、テッド・チャンの

『あなたの人生の物語』も併せて読んでみたら面白いと思う。

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