読書ノート

宮城谷 昌光『天空の舟』感想。霧の中の夏王朝

投稿日:2006-11-27 更新日:

宮城谷昌光全集第四巻  天空の舟

宮城谷昌光全集第四巻 天空の舟

宮城谷 昌光

日本の教科書では、中国は商(殷)から中国の王朝は始まったと

されている。一方、中国はそれ以前に夏王朝があったと認めている。

伝説のなかの王朝なのか、それとも実際に

強大な王が中原を統一したのか

長江文明と共に、歴史の霧の中の王朝である。

その夏王朝を果敢にも小説に描いてしまおうという宮城谷昌光の挑戦。

甲骨文字が発明されたのは、殷王朝も末期になってからである。

夏王朝にはまだ文字は無いので、『孟子』や『書経』等の断片的

資料から物語を構成していき、先ごろ逝去された白川静先生の

甲骨文字研究から大胆に当時を再現している。

中国の悪王として常に並び称される

夏王朝最後と殷王朝最後の王「桀・紂」であるが、

紂王は封神演技等で割りと知られているのに対して、

桀王はどんな人物だったか、自分もあまり把握していない。

決して無能ではなかった紂王と同様、桀王も後の皇帝たちに

比べて決して無能ではなかったが、夏王朝のシステムが

腐敗するに従い、王朝を滅ぼさざるを得なかった軌跡が

桑の木から生まれ、賤民から商の湯王の重臣となった

伊尹の目を通して語られている。

中国では、近年発掘ラッシュで、上海博物館などでは

夏王朝時代のものであるという青銅器などが展示されていて

夏王朝の存在がいっそう重視されている。

黄河文明の深く知りたい人には、最良の書であると思う。

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