麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション
ポール・ラヴァティ
あまり描かれることのないイギリスの負の部分を克明に描いた良作。
イギリスの正式名称がなぜ
「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」なのか
これを観ればよく分かる。
第二次世界大戦の映画を観ていると、
「悪のナチス」対「正義のイギリス」とステレオタイプに描かれる
ことが多いが、その裏側でイギリスが大英帝国の残照を必死で
維持しようと悪の限りを尽くしていたことが分かる。
前半の英軍の描写の仕方がナチスとそっくりなのもその暗喩だろう。
しかしこの映画はその単純な構図を超えて正義をめぐって
分裂していくアイルランド義勇軍を悲しみを以て描いている。
この分裂であるが、インドとパキスタンや
イスラエルとパレスチナと同じで
自然的な分裂ではなくてイギリスが裏で
糸を引いているのではないかと勘ぐってしまう。
1998年からアイルランドではIRAからリアルIRAが派生して
また紛争が発生している。
アイルランドだけではなく世界各地の紛争地帯で
この映画のような悲劇が毎日起こっているのだろう。