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イギリスを「EUから離脱途上」と指摘していたエマニュエル・トッドの卓見。EUが無くてもアメリカやイギリス連邦など、価値観を共有する国々があるイギリスは大丈夫?

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ソ連崩壊を的中させていたエマニュエル・トッド

 かつてソ連崩壊を予言したエマニュエル・トッドは『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)』でイギリスをEUから「離脱途上」にあると指摘していました。

イギリスはいつかEUを離脱するだろうと予想していたトッド

私はイギリスを「離脱途上」というように描写した。

なぜならばイギリス人たちは、彼らにとってぞっとするものである大陸ヨーロッパのシステムに加入することはできない。

彼らはある種のフランス人たちと違い、ドイツ人に従う習慣を持っていないのだ。

それだけでなく彼らは、ドイツ的ヨーロッパよりはるかにエキサイティングで、老齢化の程度もより低く、より権威主義的ではないもう一つの別の世界である「英語圏」、つまりアメリカやカナダや旧イギリス植民地の世界に属している

 今日6月23日にイギリスではEUから離脱するか残留するかの投票が行われ、世界が固唾を呑んで見守っていますが、トッドは歴史学や人類学的側面から、この流れは予想済みだったようです。

 インタビューアーからの「イギリスはいつかEUから離脱しますか」との問に対して

もちろん! イギリス人はより強いわけでも、より優れているわけでもない。

けれども、彼らは背後にアメリカ合衆国を持っている。

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早い話、自分のことを言わせてもらえば、自分の属するネイションの自律性の消滅に直面している一フランス人として、もしドイツの覇権かアメリカの覇権か、どちらかを選べといわれたら、私は躊躇なくアメリカの覇権を選ぶよ。

私にしてそうなのだから、イギリス人の場合、どっちを選ぶかなんて分かりきっている。

 と即答します。

イギリス人はドイツの覇権よりアメリカの覇権を望むだろうし、フランス人の自分もそうだと。

EUから離脱してもアメリカやイギリス連邦がある

 イギリスがEUからすると経済的なダメージが大きいとする報道をよく見ますが、トッドの言うようにイギリスにはかつて植民地であったアメリカや今もイギリス連邦としてゆるい繋がりのあるカナダやインド、シンガポールなどの国もあります。

また公用語として英語を採用している国も多くあり、EUから離脱して、ヨーロッパとの貿易が弱くなっても他で補えるという算段があるのかもしれません。

 日本のメディアが経済や移民の面からしかイギリスのEU問題について報じない中、トッドはイギリスとドイツの家族形態や文化・思想の面まで踏み込んで論じています。

これらの論を見ると、今日の投票で残留となったとしても、いずれイギリスは離れていくのではないかと思いました。

 『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)』ではトッドの国であるフランスやその他の国々がいかにドイツの覇権を苦々しく思っているかがこれでもかと描かれていて、イギリスが離脱しなかったとしてもEUは瓦解していくのではと感じました。

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