文化

白居易の字《あざな》「白楽天」の由来とは?「運命「を信じ、今の地位境遇に安んじてあれこれ悩まない

最近(2012年)中唐の詩人、白居易[はく きょい:772年(大暦7年) - 846年(会昌6年)]の研究をしています。

日本でも韓国でも古来から親しまれた白居易

白居易の漢詩はかなり平易と言われ、日本でも韓国でも古来から親しまれています。

しかしそれでもやはり現代の日本人にとっては外国語の古文なので、意味が取れないことも多いです。

「白楽天」の字《あざな》の由来とは

日本では字《あざな:中国で成人男子が実名のほかにつけた名》の「白楽天」で呼ばれることも多いのですが、その字がどうして付けられたのか、今まであまり気にしてませんでした。

「まぁとにかく楽天的な人だったのだろう」と思っていただけでした。

寒門出身で刻苦勉励した白居易

少し調べてみると白居易の人生は順調なものではなく、寒門の出身だったため苦労の連続でした。

さらに、後ろ盾となる父親が早く逝去したため、進士に及第するまではかなり大変だったようです。

科挙の試験地獄でボロボロになった白居易

日本でも知られているように中国の科挙の熾烈さは昨今の受験勉強の比ではありません。

白居易は「この時の試験勉強のため、体はボロボロになり、歯を悪くするし酷い飛蚊症にもなってしまった」と嘆いています。

科挙及第後に付けた「楽天」という字が意味するもの

「楽天」という字は苦しい受験戦争にどうにか勝ち抜き、進士に受かった時に付けられたそうです。

吉田博「菖蒲園」1903年

中国語の本にその字を付けた理由が書かれていました。

黄錦珠『白居易』幼獅文化事業公司 pp.19-20の内容を翻訳して引用します。 白居易は自分を激励するために、「楽天」という字《あざな》を名乗った。 「樂天知命(運命を信じ、今の地位境遇に安んじてあれこれ悩まないこと)」、 将来どんな困難に遭おうとも、気持ちを落ち着けて、慌てず騒がず冷静に処理し、自分のことは棚に上げて他人や周囲のせいにしないことを願ったのである。

ちなみに中国語の原文はこちら 白居易為了勉勵自己,就替自己取了一個字 Báijūyì wèile miǎnlì zìjǐ, jiù tì zìjǐ qǔle yīgè zì 叫做「樂天」。意思是希望自己要「樂天知命」, Jiàozuò lètiān. Yìsi shì xīwàng zìjǐ yào lètiānzhīmìng 無論將來遇到甚麼事,都要平心靜氣地接受,加以處理, Wúlùn jiānglái yù dào shénme shì, dōu yào píngxīnjìngqì de jiēshòu, jiāyǐ chǔlǐ, 不要怨天尤人。 Bùyào yuàntiānyóurén.

我が子の死、政争に敗れて左遷等、苦難が続いた

その後、白居易は生まれてきた子供のほとんどを早く亡くし、政争に逢い、地方へ左遷されたりとさらなる苦労にさいなまれました。

しかし、「楽天」の字を付けた時の気持ちを忘れず、乗り越えています。

私は唐詩のなかでは王維、柳宗元などが好きで、白居易は「長恨歌」の悲恋の詩のイメージが強かったため、

あまり読んでいませんでしたが、これからまた色々読んでみたくなりました。

中国語の成語の補注

  • 「樂天知命 Lè tiān zhī mìng 」=運命を信じ、今の地位境遇に安んじてあれこれ悩まないこと
  • 「平心靜氣 Píng xīn jìng qì」=気持ちを落ち着け、冷静な態度をとる。あわてずさわがず
  • 「怨天尤人 Yuàn tiān yóu rén」=天を怨み、人を咎める。自分のことは棚に上げて、一切を他人や周囲のせいにすること

台湾の三民書局の『白居易詩文集』全2巻を買いましたが、忙しさにかまけて全然読めていません。

やはりまずは日本語で白楽天のアンソロジーから入った方が良さそうです。

-文化