この記事ではキリスト教でもユダヤ教でも重要な預言者である「イザヤ」が描かれる『イザヤ書』の背景や登場人物について簡単に解説します。
私は20年以上、聖書を一応読んでいるクリスチャンなのですが、今回整理することで自分でもいろいろ勉強になりました。
『イザヤ書』の歴史的背景: イザヤの時代と中東の政治動向
イザヤは紀元前8世紀に活動した預言者です。その時代は世界最初の帝国と言われるアッシリア帝国が勢力を拡大していました。この時代の中東において、アッシリア帝国の軍事力は圧倒的で、周辺国を次々と征服していきました。ユダヤ人の王国であったイスラエルとユダ王国も迫り来る脅威にさらされていました。この危機の時代が『イザヤ書』の舞台なのです。
イスラエルとユダの関係
イザヤが活躍する前の時代から、当時のユダヤ人の国はイスラエル王国(北王国)とユダ王国(南王国)に分裂してしまっていました。そしてイザヤが預言を行っていた時期には、イスラエル王国がアッシリアによって滅ぼされることが決定的となり、もはや避けられない事態となっていました。
ユダ王アハズの屈辱的な選択
当時のシリアとイスラエルがユダ王国を攻撃した際、アハズ王はアッシリア帝国に助けを求める決定を下します。これはユダ王国がアッシリア帝国の従属国となってしまうことに他なりませんでした。
ヒゼキヤ王の独立の試み
ヒゼキヤ王の治世には、アッシリア帝国からの独立を画策する動きが見られるようになります。しかし、この動きはアッシリア帝国のサルゴン2世による侵攻を招くこととなります。それでも、ユダ王国はなんとか持ちこたえ、エルサレムは奇跡的に陥落することはありませんでした。
イザヤの預言の焦点とは
このようなユダ王国を取り巻く政治的激動の中で、イザヤは預言を続け、神の言葉を伝えました。そのメッセージは神の主権、ユダの民の信仰の喪失とその結果、そして神の救いの約束という3つの重要なテーマを中心に展開されました。
『イザヤ書』の内容とキリスト教への影響
イザヤはユダ王国の民にその罪を厳しく指摘し、神の裁きが迫っていることを警告します。しかし神の裁きの後には、神の救いが訪れるとも語っています。ここには、後のイエス・キリストとして解釈されるメシアの出現の予言も含まれています。
また、神が新しい天地を作り出すという希望に満ちたメッセージも特徴的です。この部分はキリスト教の終末論に深い影響を与えています。新約聖書には、『イザヤ書』からの多くの引用が見られ、キリストの役割や教えについての理解を深める手がかりとなっています。新約聖書はイザヤの預言が成就していく過程として読むこともできます。
イザヤは3人いたという説
興味深いことに、文献学的研究により、『イザヤ書』の内容や文体の変遷があることがわかりました。そのため、『イザヤ書』は異なる時期の三人の預言者によって書かれたのではないかという説が提唱され、一定の支持を得ています。
この記事で学んだユダ王国で活躍したイザヤを「第一イザヤ」、バビロニアの捕囚時代に活躍した「第二イザヤ」、捕囚からの帰還時代に預言した「第三イザヤ」とされています。
まとめ
『イザヤ書』は長くて複雑なため、キリスト教徒である私にとっても難しい預言書です。
特になじみの無い名前や地名が出てくると分かりにくさに拍車がかかります。
この記事でイザヤ書が少しでも身近に感じられるようになれば幸いです。