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映画「マトリックス レザレクションズ」感想 アメリカの扇動的虚構がまた動き出す

マトリックスの第4作目となる、約20年ぶりの新作「マトリックス レザレクションズ (Matrix Resurrections)をやっとのことU-NEXTで観た。

前3作品は多感な20代のころに見たこともあって、かなり好きな映画だが、「なぜラナ・ウォシャウスキー監督は第4作目を?」と疑問符が残り続けて、なかなか観られなかった。

以下、「マトリックス レザレクションズ」のちょっとした概要と良かったところと残念なところを書いてみようと思う。

サイバーパンクシティにいる赤髪の女性画像 Stable Diffusion WEB UI Model=BreakDomain

前3部作を観なくても大丈夫なのか?

前の3作品と繋がりがあるようだし、U-NEXTでも過去作が配信されていたので、復習してから観ようと思ったが映画を三本観る元気がなくて、前のストーリーもうろ覚えのまま観た。

  • マトリックス (1999)
  • マトリックス リローデッド (2003)
  • マトリックス レボリューションズ (2003)

ところどころ記憶が薄くなりすぎていて分からないところがあったが、それでも楽しめた。

サイバーパンクシティにいる黒髪ショートカットの女性画像 Stable Diffusion WEB UI Model=BreakDomain

もちろん、三部作を観てか「レザレクションズ」を観た方がより楽しめるのは間違いない。

でも、ところどころ前作の映像が差し込まれるし、セリフなどで補完してくれるのでなんとかなる。

「マトリックス レザレクションズ」の概要(冒頭のあらすじ)

3作目「マトリックス レボリューションズ」のラストでの機械達との戦争で、ネオは命を落とした。

実は機械たちによって生き返らされていたネオは、トーマス・A・アンダーソンとして再度マトリックスの仮想世界の牢獄に囚われいた。

仮想世界(マトリックス)のネオは凄腕のゲームプロデューサーであり、前三作での記憶を自作のゲームのストーリーと思い込まされて、洗脳状態にあった。

ネオは時々悩まされる幻覚に悩んで、精神科医から精神を安定させる「青い薬」を処方され、日々を過ごしている。

カフェで前作まで協力していた女性「トリニティ」に出会い、モーフィアスとも再会し、ネオとしての自分を取り戻す。

サイバーパンクシティにいる銀髪ショートカットの女性画像 Stable Diffusion WEB UI Model=BreakDomain

良かった点

何と言っても、キアヌ・リーブスがかっこいい。

配役がすばらしい

もともと20年前からもちろん超絶イケメンではあったが、今作では長髪・ヒゲのいぶし銀中年として活躍していて哀愁がある分、よりかっこよいい。

サイバーパンクシティにいるピンク色の髪の女性画像 Stable Diffusion WEB UI Model:BreakDomain

キアヌ・リーブスの他にも

  • キャリー=アン・モス
  • ジェイダ・ピンケット・スミス
  • ランベール・ウィルソン

などなど、前作までの俳優と同じ人物が演じていて時の重みを感じることができた。

エージェント・スミスやモーフィアス等、俳優は変わったがそれぞれ良い味を出している。

メタ的な要素満載で考察が楽しい

物語の前半では、前三部作の内容がゲームだったという設定になっている。

その仮想世界(マトリックス)の中で、ゲームプロデューサーとなったネオが「マトリックス4」の制作をするように親会社のワーナー・ブラザーズから圧力をかけられていたとか、いかにもウォシャウスキー姉妹に本当にあったような話が挿入されている。

エンドロールの後もこの種のメタ要素の映像があるため、最後までぜひ観てほしい。

残念な点

「マトリックス」の第1作目が上映された1999年、ハリウッドではワイヤーアクションやカンフーのシーンはほぼ使われていなかった。

また、哲学的で深遠かつ東洋的神秘に溢れた映像美、バレットタイム等の表現は深遠で、「驚異の映像革命」ともてはやされていた。

たしかに当時は先進的ですごかったものの、2022年ではもう他の作品でも相当使われているため、新鮮味はほぼなくなってしまった。

サイバーパンクシティにいるピンク色の髪の女性画像 Stable Diffusion WEB UI Model:BreakDomain

これは『スターウォーズ』とかもそうで、その後の作品のデファクトスタンダードとなってしまった故の宿命とも言える。

ただ、1999年公開当時も『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を見たことがある日本人からすれば、そんなに新鮮味はなかったけど、実写で表現するその技術力と資金力に感嘆した。

まとめ【現実と相互干渉するコンテンツ】

トランプというネットの世界の怨念というか情念から生み出され、大統領選でアメリカがしっちゃかめっちゃかになったとき、「赤いピルと青いピル」という言葉が現実でも飛び交っていた。

この「赤い薬と青い薬」というのは「マトリックス」シリーズで「現実に目覚めるか、現状を認めて維持するか」という役割を果していた。

サイバーパンクシティにいる金髪ロングヘアーの女性画像 Stable Diffusion WEB UI Model=BreakDomain

陰謀を現実だと信じる人たちは「赤い薬を飲んだ」陣営であり、「Qアノン」に扇動されてディープステートと闘っていると信じている。

『マトリックス』という映画が現実を侵食し始めたかのようにも見える。

『マトリックス レザレクションズ』では、人間にはフィクションが必要だというセリフがあった。そういえば『シン・エヴァンゲリオン』の最終作でも虚構と現実が溶け合うという「アディショナルインパクト」が表現されていた。

『マトリックス』でも『エヴァンゲリオン』でも20年以上も愛され、語り継がれるコンテンツはどこかしら現実と相互干渉してしまうのかもしれない。

『マトリックスレザレクションズ』はラナ・ウォシャウスキーが両親の死の悲しみを紛らわせるために制作した単独作品で、続編の予定はないいとされる。たしかに今作は大団円のように見えるが、『マトリックス リローデッド』のような卓袱台返しが起こる余地はまだまだありそうだ。

それに作中で敵陣営の一人が「スピンオフ作品」で会おうと言っていたので、『アニマトリックス』のような形で「マトリックス」世界はまだまだ広がりを続けそうである。

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