うつ病 ライフハック

「死」と向き合う「禅」希死念慮を乗り越える方法を鈴木大拙の考え方から学ぶ

ストレスフルな現代社会では、重い重圧に耐えきれなくなってしまう人が絶えません。
そんな人たちが、どうにか現実に折り合いをつけて生き延びるために有効なのが「禅」の教えです。

吉田博「日本南アルプス集 駒ヶ岳山頂より」1928年

禅の思想で「死」などの実存的な悩みと向き合うために

「死にたい」とtwitterでつぶやいたばかりに、異常者に目をつけられて殺されてしまうという事件、本当にやりきれません。

特に自分よりもずっとずっと若い人たちが巻き込まれたということが悲しいです。

私も若い頃はそういう実存的な悩みがありました。

そして、自分自身が20代でウツになったときは「死にたい(というよりパッと消えさりたい)」という思いが頭から離れなくなることもありました。

被害者の人の中にも、もしかしたら「うつ状態」の人がいたかもしれないと思うとさらにやりきれません。

私自身はときどき鬱に悩まされても、希死念慮が働くことはほぼなくなりました。

それは仏教の「禅」の思想などに触れて、色々学んだことも大きかったと思います。

アメリカに禅をひろめた鈴木大拙

鈴木大拙すずきだいせつという人は、明治~昭和の禅修行者であり、哲学者です。鈴木大拙がアメリカに渡り、禅の考え方を説いたことで禅ブームが起こりました。アメリカで禅が「Zen」と通用するのは鈴木大拙の影響です(中国語の「禅」は発音が違います。)

スティーブ・ジョブスの師匠筋に当たるともいえます。

その鈴木大拙は死についてこう語っています。 死の意味ということを尋ねられるが、死そのものは独立の事象でなくてその背後に生を担っている。 つまり生と死とは離れられぬもので、死はいやだ、生は好きだといっても、甲を乙から離すのは絶対に不可能である。 それ故、死の意味はやがて生の意味或は生死の意味ということにならねばならぬ。 生死の意味といえば、人間世界の意味ということになる。

ここで大拙は生と死は表裏一体であると言っています。

当時、ドイツの哲学者ハイデガーも『存在と時間』「死を自覚し見つめることにより、本当の人生を生きることができる」という思想を説いています。

第一次世界大戦、第二次世界大戦という時代の荒波を乗り越えてきた彼らが抱いた思想が似ているというのが興味深いです。

私たち人間はいつか必ず死ぬということを思い知らなければ、今現在、生きているということを実際に心から感じることができないのですね。

ここまではとても納得できるのですが、鈴木大拙はちょっと奇妙なことを言い出します。

イヌやネコは死なない?

生死は人間にのみあることで他のものにはない事実である。 犬も猫も生物故死ぬる。 すなわち彼らに生死があるではないかと言う人もあろう。 が、犬猫の生死は生死でない。草や木の栄枯と同じい、水や瓦斯ガスの化学的分解または抱合と同じい。

鈴木大拙によれば、イヌもネコも生物だから死ぬけれども、それは植物の枯れるようなものとか化学反応のようなもので、生死ではないと言っています。

これは大多数の日本人の感覚には合わないですよね。イヌにもネコにも感情はありますし。

なぜ大拙はこんなことを言い出したのでしょう。 なぜかと言えば、人間以外のいわゆる「生物」なるものは、そのいわゆる死、そのいわゆる生なるものを、人間が見るように見ないからである。 彼らは生れても死んでも、石のわれたか落ちたかのようにしか見ていない。 彼らには生死の「意味」はない。生死の「事実」はあっても、「意味」がなければ、「事実」そのものは成立しないと言ってよい。

つまりはイヌやネコなどの動物と人間の「死」に対する姿勢というか、感じ方が異なるということでしょうか。

イヌもネコも観念としての「死」がない。どういうことかというと、犬も猫も将来自分が必ず死ぬ存在であると自覚していないんです。

死という抽象的な概念がないから、身体が動かなくなるまで、呼吸が続く限り当然のように生きて、死ぬ時は自分が死ぬという自覚もないのでしょう(本当のところはイヌやネコ自身じゃないと分かりませんが。)

手塚治虫の傑作『ブッダ』の初めの方にもこういう話がありました。マンガで仏教思想を描いてしまうとは、やはり天才です。

イヌもネコも、死について人間のように迷ったりアタフタすることなく、その生を全うします。その姿は人間には崇高に映ります。

人間は脳が発達しすぎてしまったため、将来必ず訪れる「死」を考えてしまい、惑い続けてしまいます。

仏教者はどう「死」と折り合いをつけてきたのか

人が生きるというのは、その「死」とどう折り合いをつけていくのかということ。その過程で洋の東西を問わず、人は様々な思想を生み出してきました。

そういう考え方を学ぶことは、生ききるための強力な味方をつくることと同じなのですが、学校ではそういうことは教えてくれません。

「禅の考え方」では「死」にどう折り合いをつけて来たのか、鈴木大拙の思想に沿いながら、考えていきたいと思います。

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